87~90年に週刊少年チャンピオンで連載されたみやたけし先生のサッカー漫画。静岡県立`若鳥高校’1年の“南野風”はサッカー選手だった兄`嵐’を事故でなくし、兄の夢だったサッカー伝説を成し遂げるために海岸に練習場で己を磨いていた。やがて嵐の恋人だった`河合えくぼ’先生がサッカー部顧問に就任。風が直向に鍛錬するその姿をみて、共に伝説をつくろうと誓い合う。静岡大会では風の活躍で若鳥高は決勝まで進出するが惜しくも敗れる。やがて`日本サッカー改革プロジェクト’に飛び入り参加した風は日本のメンバーたちと世界の強豪に挑んでいく。
かつてジャンプやサンデーで「GO★シュート」「はしれ走」といったコメディー色を織り交ぜたサッカー漫画を描いてきたみやたけし先生が本格的なサッカー漫画として手掛けたのが本作品である。かつてのアシスタントだった高橋陽一先生が「キャプテン翼」で一世風靡し、日本にサッカーブームが吹き荒れた頃でもあり、その流れに便乗して各誌で次々にサッカー漫画が生み出された影響もあってか、それにより挑んだものと思われます。
本作品が始まった頃は世間ではサッカーが定着していたため、作品では基礎よりサッカーを強くすることをメインに描かれてます。主人公の“南野風”は「GO★シュート」の`剛秀人’と同様、純粋で能天気でサッカーのみにしか興味をもたないサッカーばか(しかも顔も大体同じだし、慕ってくれる彼女もいます)。ただ亡くなった兄の遺志を背負っている点が違い、そのためストーリーも少々シリアス的要素が含まれてます。風は夢半ばで亡くなった兄`嵐’のサッカー伝説をつくる夢を果たすために、危険を伴う練習場で日夜練習に励み、それを見た嵐の恋人の`えくぼ’先生が恋人を失った迷いを断ち切って共に伝説をつくることを誓う、青春ドラマ風な展開で物語は始まります。そして2人の懸命な姿をみたサッカー部員たちも次第にやる気を起こさせ、風と共に頑張って県予選を勝ち抜いて決勝まで進みます。その間いろんなライバルたちと出会い、実力を分かち合う。このあたりまでは青春スポーツ漫画特有のストーリー展開である。決勝では静岡No,1のストライカー`嵐山雄次郎’率いる草薙西に善戦及ばず敗れます。しかしここまでは序章。物語の根本はこの後にくる“J・R企画”で、ワールドカップ制覇を若手の力で成し遂げる日本サッカーを作り上げるという一大改革にあります。この頃「キャプテン翼」が終了に至り、そこで盛り上げるためにこのような大胆な設定をしたかは定かではありませんが、まあ世界の頂点に立つというのは誰でももつ夢でもありますから。しかし風はそのメンバーに選ばれず、無理やり押し入っていくというのは強引でしたね。それだけ強い気持ちを持たなくてはならないということを教えているのでしょうか。また更に強引なのは奥寺康彦・加藤久・手塚聡・武田修宏といった全日本チームと争わせて日本代表を決めるという展開。彼らの顔を立てて相当な激闘になってはいますけどね。その試合に勝ち、日本代表を決めた風たちですが、最初の親善試合のマラドーナ・ジーコ・カニージャ・シューマッハーといったスーパースター率いるブラジル代表に3-23の屈辱的大敗を喫します。「キャプテン翼」のように少しずつ成長しながら世界を制覇するのとは違い、世界のプロの実力をまざまざとみせて、それに打ち勝っていくために何をすればいいのかということを教えているのが本作品の見所でもあります。強引な展開で爽やかさ等はほとんどありませんが、サッカーの厳しさと勝つための過酷さを教えているところがいいです。
主人公の“南野風”は最初は`剛秀人’のような爽やか能天気なサッカーばかでしたけど、厳しい試合を重なるにつれ次第に険しい顔の男に変わっていきます。男としての磨きがかかり成長を遂げてきたといえますが。そして彼の支えとなった“河合えくぼ”と恋人の“浅川則子”もよかった。日本代表メンバーの`嵐山雄次郎’・`檜田翔’・`柴崎要’・`早瀬光志’・`陣内光之助’・`明石大吾’・`飛鳥命’といった面々も`キャプ翼’のキャラたちに劣らぬつわものたちでした。特に嵐山が最後の`アクセルシュート’を放って逝ってしまうシーンは、涙ものでした。またキャプ翼同様に必殺シュート“アクセルシュート”や`オーバーヘッドキック’`ドライブシュート’も出てきた上に、激突や流血等の過酷なシーンと入り交ざって実にスリリングな展開が目白押しでした。
本作品は「キャプテン翼」のような爽やかさと夢はほとんどなく、勝つための試練と険しさを描いたシビアな内容かもしれませんが、そのドロ臭さがいいと思うし、マラドーナ・ジャンニーニといった有名選手を出したりして作品を盛り上げているところを踏まえて評価は【最高!】にします。アシスタントだった高橋陽一さんが「キャプテン翼」でサッカー漫画としての巨匠になったこともあってか、元師匠としての意地をみせるために挑んだ作品なのかもしれませんが、情熱と勝利のために執念というものを相当に描いており、内容的には決して劣るものではありません。サッカー選手を目指す者には決して読んで損はないものでしょう。「キャプテン翼ワールドユース編」より先に世界を制覇した作品となりましたが、決勝戦が描かれなかったのが残念。それまでに描き尽くしてしまったのかもしれませんがね。
みやたけし-風のフィールド 全17巻 (RAR/696.2MB)
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