YU-Gの意気込みを如実に伝えている点として、拠点である大阪を舞台にした人情味あるバラッド「御堂筋」や、某ロック・ユニットの名曲顔負
けの長文タイトル曲「バラ色じゃない普通の日々を特別と思えたから」に代表されるレトロ歌謡との対峙が挙げられる。クラブ・シーンの盟友たちのバックアッ
プもあって生み出された前作に親しんだ者からすれば、思わず肝を潰すような手法なのかもしれない。だが「Summer
snow」シリーズを鑑賞しても分かるとおり、彼はかねてからポピュラリティに寛容なアーティスト。不退転の覚悟が伝わりやすくなったという意味でも、久
方ぶりの新作に合わせた姿勢の強化は賞賛に値する試みと言えるだろう。
もちろん、R&Bや現行のダンス・ミュージックを取り入れ
た比較的スタンダードなYU-Gイズムも健在なのでご安心を。特に先行リリースされ好評を博したダンサブルなアッパー「Nine
tails」や、重厚なビート使いを展開するミッド「Show me love
syndrome」あたりの楽曲は、YU-Gが得意とするシリアスかつ虚無的な世界観の大盤振る舞いで、思わず顔がほころぶ。また、少々マニアックな切り
口で言えば、本作に携わっているサウンド・メイカーも非常に豪華で、EMI
MARIAらへの楽曲提供で知られるNAOtheLAIZA、L&J(現Lugz&Jera)やYOUNGSHIMを輩出したク
ルー:NITEMENでもとりわけ異彩を放っていたRYU-JA、そして自らがプロデュース・アーティストとして活躍を続けるVNOなど、関西のブラッ
ク・ミュージック・シーンを牽引する辣腕たちの共演が贅沢にも実現している。この点からも、本作に懸けるYU-Gの闘志にも似た気合が窺い知れるかと思
う。
世の女性を虜にする色気と、男が憧れる生き様の両方を備えるYU-G。非の打ち所のない彼が丹精を凝らして作り上げたこの『PASSING!!』は、ストリートから全国へ羽ばたくまでの全過程を要領よく詰め込んでいるばかり
YU-G-PASSING!! (MP3/2013.12.11/113.3MB)
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